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[コメント] ナイロビの蜂(2005/独=英)

美しい映画だ。物語の美しさと、アフリカ大陸の情熱的な色合いのいずれもが上質の品位を保っている。監督の才能を見た。
chokobo

テッサレイチェル・ワイズの見事な演技が光る。特に前半の夫ジャスティンレイフ・ファインズとのエピソードがいい。この二人が近づきあうきっかけ。そして全く異なる個性の二人の都会における情熱的な恋愛。そしてその情熱的なシーンの数々。自分の意思を強く持つ女性が、その感情を抑えきれず、なりふり構わず自己表現をしてしまう。最初に二人が会うきっかけとなったシーンが、最後の最後まで印象に残る。

恋愛のシーンの数々も素晴らしい。カメラは彼らの私生活を叙情的に追いかける。夫ジャスティンは彼女の奔放な性格を包容力で受け止める。この二人の関係。前半のエピソードでは、夫の優しさが歯がゆいほどに思われる。

ファーストシーンがジャスティンとテッサが最後に会話をするシーンだ。夫が妻を見送る。妻は陽炎の中に消えてゆく。カメラは残された夫の姿だけにピントを合わせる。

夫は妻の全てを許すが妻の行動に疑問を抱く。様々な男関係を重ね、悪い噂が耳に聞こえる。しかし、妻の死をきっかけに、その真実に迫ろうと調べると、アフリカ大陸を食い物にする悪しき企業の疑獄が明らかとなる。

(これ以上はネタバレになるので控えよう)

前半の淡々とした情愛シーンの数々が好きだ。男女の関係には様々な種類があるのだが、抑えきれない関係が見事に表現されている。

ドラマの中心が実は後半のサスペンスに向かってゆくのだが、後半のスピード感あふれるシーンが、前半の豊かな恋愛シーンと対比となっていて、意味があると思う。

妻が夫の仕事を理解しながら、現地アフリカの難民を救おうとして、乳飲み子を抱えた子供を車に乗せろと嘆願する。夫は職業柄それを禁じられているため、頑なに拒否する。そして後半、夫が妻の追い求めていた謎を追求しようとアフリカの大地を再び訪れたとき、同じ場面に遭遇し、かつて妻が自分に求めたことを他人に求める。

妻を失って、妻のことを調べているうちに、夫が妻に同化したシーンである。

フェルナンド・メイレレスは『シティ・オブ・ゴッド』の監督だが、この映像の素晴らしさは見事としか言いようがない。アフリカの難民の現実がどうなのかは知る由もないが、とにかく大陸の大地の美しさを見事に演出している。

恋愛シーンの情熱的な表現と、大陸の自然表現、そして時折美しく映し出される鳥の群れ。見る者はカメラが縦横無尽に動き回ることに一瞬戸惑いを覚えるが、そのひとつひとつのシーンが印象的だ。

レイフ・ファインズも相変わらず質の高い演技をしている。いかにもイギリス王室演劇学校出身のセリフ使い。そしてそのキャラクターの強く優しい印象は、この主人公に相応しい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ホッチkiss[*] おーい粗茶[*] カレルレン 代参の男[*]

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