イサオは幸江を幸せにしたかった。 　とってもとっても幸せにしたいから 　綺麗な体でお迎えに行った 　ヤクザしか出来ないような男なのに 　後先も考えずに、組を抜けて迎えにいったんだ

　　　　　　でも

　全然、幸せにしてあげられなかった 　苦労している姿を見て悔しかっただろうね 　そうさせている自分が、さぞかし腹立たしかっただろうね 　誰よりも一番大事にしたいのに 　直視出来ないよね、申し訳なくって

　そんな折、子供が出来たという 　あせるよね、イサオ 　今だって、苦労ばっかり掛けているのに 　この上子供まで生まれてきたら、もっと苦労させちまう 　幸江は自分なんかといちゃいけないと思ったのかね

　「出てけ」

　もうどうしたらいいかわかんなくなっちゃうよね、情けない話だけど

　でも、気付いた 　どうしても失いたくないもんなんだって、体全身で感じながらがむしゃらに走った 　カッコつけてる場合じゃねぇ

　走っている間に神に祈ってたに違いないんだ 　助かったらちゃんと大事にするからって祈ったに違いない

　自分のせいで失ってしまったなにかを取り戻すって、 　すげぇ難しいコト 　「３人で、海行こうな」 　たかがこれだけのセリフだけど 　すげぇ心に響いて泣けた

　幸も不幸も人生には意味がある

　もう二度と、同じ過ちは繰り返しちゃいけない 　幸せは、ずっとそこにあったんだ