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[コメント] ビハインド・ザ・コーヴ 〜捕鯨問題の謎に迫る〜(2015/日)

ザ・コーヴ』('09/米)にコメントした以上、忘れない内にこちらも見なくてはとは思ったのだが…、う〜ん。☆3.1点。
死ぬまでシネマ

どうにもこうにも面白くない。監督に力量が無いのは明らかで、画面作りも非常に宜しくない。但し、この映画を視ておく事は矢張り必要な事に思われるので(残念ながら他に無いので)、存在は評価したいと思う。

まず私自身の考えを纏めてみると、食文化としての鯨食の歴史は(古代から)あった訳だし、最近でも戦後の日本人の栄養面を支えた部分もあったのだと思う。しかしそれは、今後も永続的に鯨を食べ続けなければならない理由にはならない。私は学校給食で1〜2回位鯨肉を食べたと思うのだが、残念ながらそれは旨くなかった。本作の附録映像でも「鯨種によって味が違う」と言ってるので、私が食べたのは美味しくない種類だったのかも知れない。これが美味絶品の記憶だったら意見も変わるのだろうか。

私は今のところ菜食主義者ではない。しかし家畜の餌需要が農業生産を圧迫しており、ひいては地球温暖化に繋がると盛んに報じられる中で、「いずれは今迄の様には行かなくなるのだろうな」と感じている。また海豚や鯨が驚くべき知能を有している事も聞いているので(馬もそうだが)、それらの食用の屠殺には(敢えて言えば牛や豚よりも)抵抗を感じている。しかし今後の食糧難の中で、鯨肉がもし必要になる事があれば、食べるも仕方が無いのではとも思う。

本作で残念なのは、登場する人物の中で聴き取り易い言葉を話すのは概ね(ワロー教授やワーン元カメラマン等)外国人だった事だ。太地町の地元民等は町中でいきなりカメラを向けられて喋っているので、余り論理的な言葉では無い。これは専ら監督が悪いと思う。そんな中、ルイ=シホヨス(ザ・コーヴ監督)やリック=オバリー(ドルフィンプロジェクト創設者)から破綻した言質を引き出すのだが、それも何だか卑怯な感じがして効果的でなかった。

それより先ず気になったのは、ラッセル=グドールによる語りで「ケイコは…」と監督の行動を三人称で語る事だ。本来監督自身が「私は…」と語るべきで、非常に違和感を感じた。

問題点としては、(1).鯨(&海豚)漁は現在生態系や種の維持に対し問題なのかという事があり、(2).鯨漁は残酷で止めるべきなのかという事があり、(3).鯨漁という日本の食文化に介入してくるのは正当なのかという事があり、更には(4).そもそも日本に対する差別や敵愾心・悪意が先行しているのではないかというのである。本来これらは分別・章立てして考察すべきなのに、飲み屋でクダを巻く様にだらだらとゴチャ混ぜにして流してゆく。これでは『ザ・コーヴ』に対する立派な反論とはならないだろう。「お前達だってつい最近迄やってたじゃねぇか」「他所ではあんな事してんじゃないか」は確かにその通りなのだが、反論としては弱い。

リック=オバリー等の方からすれば、まず海豚漁を止めたいという気持ちがあり、それを実行する為の戦略・戦術で動いているのだから、手の込んだ事をやる事自体は寧ろ当たり前の様に感じる。そこに不当・差別や嘘があると反論するのなら、もっと綺麗に(論理的に)やらないとダメだと思う。

(評価:★3)

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