売る側は『HERO』『LOVERS』を超えた、と２作の延長上で宣伝していた。日本の観客には他にとっかかりがないだろうという怠惰と傲慢からだが、２つの方向から較べても２作に圧倒的に負けている。(蛇足ながら「風魔の小次郎」にすら負けている)

人間ドラマという点で、前２作は「義侠の信念」「男女の情」という太い柱が貫かれていた。その濃厚な描きっぷりにもういいよ、という反発もでるものの、熱く強く伝わるものがあったが、今作では「俗にいう武侠ものネ」というだけで、安易且つ説明不足な物語が全然観客の共感を呼ばなかった。

撮影技術も金を掛けた末に散々な出来であった。冒頭雪崩のごとき地響きを立てながら７人の駆る馬がゆく画に期待させたものの、ハゲ女が出てきた村の虐殺シーンから最悪のカット割り・編集で一気に醒めさせた。人物が漫画なのは武侠もの故に仕方がないとしても、『七人の侍』をここまで貶めた脚本・演出・撮影・編集の罪は重い。