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[コメント] となりのトトロ(1988/日)

この映画に出てくるもの全てが美しい。監督はそれに満足出来なかった。「トトロ」と『千と千尋の神隠し』に共通する素材の数々→
stag-B

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「トトロ」と『千と千尋の神隠し』に共通する素材の数々。

1.オープニングの引っ越しシーン(主人公の少女の反応は正反対だが)

2.両作にまたがって登場する「ススワタリ」

3.優しい理解者としての老婆/銭婆(余談だが湯婆と銭婆は双子では無く同一人物という説あり)

4.親を思う動機による子の思いつめた行動。

5.夕暮れから夜に移ろう時期の恐怖と焦り。

6.雨の降るバス停で、いつのまにかサツキの横に立つトトロと、 エレベーターの中で一緒になる“オシラサマ”(ふんどしをしめた大根のようなカミサマ) 自ら子供に話しかけたりはしないが、そっと寄り添い見守っている。

美しい自然環境と人間の善意、そして優しい異界の存在達だけに囲まれた「トトロ」 それはそれで完結されていると思うし個人的にも文句をつけたいなどと思わない。 この映画に出てくるものは全てが美しく優しい。 しかし、そのあまりに甘く美しいばかりのファンタジーだけでは 宮崎監督は片手落ちに感じたのではないだろうか?

現代(に限った事でもないが)の子供達が生きていく世界は決して美しく甘く優しいものばかりとはいえない。

醜い人間もいれば厳しい社会や現実がある、そんな世界の中でもたくましく生きる子供を描きたく願いを込めて 宮崎監督は『千と千尋の神隠し』を創ったのではないだろうか?

(お婆ちゃんの作ったキュウリと、ハクの差し出したおにぎりを食べるシーンはどちらも美味そうだがその切実さの違いがそれを如実に示している)

監督は「トトロ」に満足できず、その延長線上に『千と千尋の神隠し』を創ったは明白である。

ラスト、病院にたどり着いたにも関わらず、母親に抱きつきに行ったりせず、 木の上から両親が談笑する姿を見るだけで姉妹は安心する。

(実際に母親に抱きついたりしたら、トトロやネコバスを巻き込んでいながらそれがただの現実になってしまうので設定上、そう出来ないとはいえ)

しかし幼い姉妹が苦労してそこに訪れた痕跡は、いつのまにか窓辺に置かれたトウモロコシにきっちり残されている。

この辺の心憎いばかりの抑制にも限りない好感を覚えるのです。

しかし何度見ても気持ちのいい映画だ。

(評価:★5)

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