[コメント] ファイト・クラブ(1999/米)
丁寧に表現を試みる、かたちをなさない「もやもや感」。ほとんど無駄といえる作業に費やした労力に敬意を表します。グループカウンセリングでアホのように泣け、しかもそれに病みつきになるなんて、アメリカのくせに激しく自虐的な笑いに満ちている。
しかし、ここまで自虐的だからこそ、アメリカでは酷評され、ウケも悪かったのではないですか? 今でも「アメリカンドリーム」を迷いなく信じて大きな夢を身分不相応にでっかいキャンバスに描いている「アメリカ教」信者がうじゃうじゃいそうだし。
私たちは総じて、小さくて特別な能力などない、「凡人」がほとんど。なのに無理やり「でっかい夢」を描く訓練を繰り返されるから、おかしくなるんだよ。それで「今の自分」、つまり、ちっぽけな幸せに満足し、ごく平均的もしくは平均以下の生活をしている「つまらない自分」を認めたくないから、シアワセになれない。で、ちょっとでも「想像力」がある人間は主人公のように妄想のヒーローをつくりだすというわけだ。でも、いつのまにかそのヒーローに、創造主である自分が無視されひきずられる。いやいや、どこまでも健全な不健全ぶりではないですか。
でも、そんなヨワヨワなアメリカをあのアメリカが認めるはずないではないわけで、そこにこの映画の自国での不評の原因があるのではないかと思いました。
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