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[コメント] ハワイ・マレー沖海戦(1942/日)

戦時中に作られた反戦映画(?)です
捨聖

海軍の全面協力でつくられたため、予科練の模様や戦闘機はほとんど本物をつかっており、とても臨場感がありなまなましい。すべて円谷プロの特撮に頼った戦後の戦争映画とは迫力がちがう。

原節子はここでは銃後を守る貞節なヤマトナデシコとして登場。わずか数年後には『青い山脈』で進歩的な女教師に大変身。見よ!この変わり身の早さ。でも、これは日本人すべてにいえることだけどね。

戦意高揚の目的でつくられた映画であるにもかかわらず、いまからみるとその歪んだヒロイズムが、戦後に製作された戦争映画なんかよりもずっと反戦映画としての意味合いを与えているように感じられた。

終盤の真珠湾攻撃の場面で、軍艦がハワイ諸島に近づくと、突然ラジオから陽気なジャズが流れてくる。数刻後に訪れる奇襲攻撃も知らず、のんきにダンスに興じるアメリカを揶揄する意図があったのだろうが、ぼくにはむしろ陽気なジャズの音楽と、日本人のしかつめらしい表情とのアンバランスが異化効果をもたらしとてもおもしろかった。

黒澤明は、山本の弟子だったから『野良犬』での有名なクライマックスシーンはこの場面をヒントにしていたのかなどと勘ぐってしまった次第である。

(評価:★3)

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