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[コメント] 青い山脈・続青い山脈(1949/日)

これはいわゆる「青春映画」ではない!
捨聖

ぼくが勤めている老人福祉施設で、好きな歌ベスト3にかならず入る服部良一の名曲「青い山脈」。ぼくは長いあいだ、この映画をたんなる青春映画ぐらいに思っていた。ところが、施設のお年寄りの平均年齢は83歳で、公開当時かれらはすでに30歳をこえていたことになり、青春映画を観るにはいささかとうが立ちすぎているように感じていた。先日、施設でこの作品を上映し、ぼくもそこではじめて観ることができてこのなぞが解けたような気がした。

結論をいうなら、これはティーンズをターゲットとした後年のいわゆる「青春映画」ではない!徹頭徹尾、社会啓蒙映画である。もちろん、当時、日本共産党員だった今井正が啓蒙したかったのは、自由や平等といった民主主義と称する欧米的なイデオロギーだったことはまちがいないが、お年寄りたちの目には重苦しい戦争からの開放感と、新しいなにかが生まれようとしている希望の象徴のように感じられたという。だからといって、原節子が演じる進歩的な女教師や生徒たちにそのまま共感し感情移入しているようにも見受けられなかった。むしろ、町の封建的勢力と対決することになった学校の理事会において、最終的に原ら進歩派の側に賛成票を投じることになった無名のひとたちこそ現在のお年寄りたちだったのかと思った。かれら無名のひとびとが進歩派の主張に全面的に賛同したわけでなかったことは、その後の歴史が明らかにしている。

(評価:★5)

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