｢ドラえもん｣の映画化第９弾｡

今回の｢ドラえもん｣は巨大ゲーム機のゲームキャラが唐の時代に出て､歴史そのものを変えてしまうという､非常にホラーテイストなストーリーで､変わり果てた現実世界で妖怪たちがのび太たちに襲いかかるシーンなど緊迫感に優れた演出が多かった｡

また本来このシリーズの売りである秘密道具の使用をさけ､のび太たちがゲームの中の｢西遊記｣のキャラとしての機能のみで妖怪と戦っているところも｢ドラえもん｣にしては珍しい展開で新鮮に感じられた｡

キャラ設定はもう少しこだわって欲しかったところだが､子供でも大人でもそこそこ楽しめる仕上がりでそれほど問題ない｡

しかし､ラストで救世主としてドラミちゃんを登場させるのは意外だが､あまりしっくりこない｡そもそも地球の歴史そのものが変わってしまったという非常事態に陥っているのに未来警察が全く関与してこないのも変だし､歴史まで変わったなら､のび太たちの親や学校の先生たちが妖怪化しているし､ドラミちゃんが助けに現れるのもおかしいと思う｡

それと､ゲーム機のせいで未来が変わってしまったのなら､ドラえもんたちが引き起こしてしまう前にそういった事故を誰かが起こしていてもおかしくないし､22世紀でそんな危険なものを発売するのもリアリティに欠けてしまう｡またドラえもん歴史を揺るがすという重犯罪を犯しているのなら警察に捕まるかスクラップにされてもおかしくなさそうだが｡妖怪が来たときの伏線として気配アラームという道具を登場させているのにほとんど活躍せずに終わってしまっているのももったいない｡

まあそういった疑問を突き詰めてしまうと話として成立しなくなるので仕方ないところだが､もう少し納得のできる理由でストーリーを追及すれば､より話にリアリティが生まれ面白くなったと思う｡良質なストーリーだっただけに子供向け映画の枠から抜け出せなかったのが残念｡