臓器売買事件に巻き込まれる不法滞在者の孤独な戦いを描いたサスペンス映画｡

母国から指名手配を受け､ロンドンで不法移民としてホテルマンとタクシー運転手の二足のわらじを履く不法移民オクウェが寡黙で､知的､行動力､正義感があり､実にかっこいい｡オクウェ役のキウェテル･イジョフォーの演技もさることながら､キャラクターの描き込み方が素晴らしい｡説明的でなく､シーンが進むごとに彼の行動によってキャラクターの性格が理解出来るようになり､様々な会話によって徐々に彼の経歴が明らかにされていく｡主人公を描くというのはこういうことなんだと実感させられた｡

さらにこの映画の優れた点は主人公が迫る困難に知力で立ち向かっている点である｡普通にアクション映画なら武力で解決するところでも主人公は自分の頭を必死に回転させて､その素早い判断と行動力で問題を解決する｡こういう等身大の主人公を見せられると､次はどうやって問題を解決するのかという点だけでも先を期待して観てしまう｡

ただ､シェナイとオクウェの関係がやや表面的で最終的に恋愛ものとして描くなら､もう少し心の繋がりを感じさせる描写や苦悩を感じさせる描写も欲しかったところ｡