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[コメント] 男はつらいよ 寅次郎相合い傘(1975/日)

船越英二が手土産のメロン持って登場すると、はや笑いが漏れる。みんなよく知ってる。好環境で鑑賞する幸せ。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 寅さん3周目。世評の高い『相合い傘』も何度目か。茶の間の会話の幸福感。「寅のアリア」(リリーの独演会を夢見る)のクオリティ。メロン騒動。相合い傘。無理がなく流れるような展開。前半の船越英二の小樽での半メロドラマもいいアクセントになっている。そして、手に入りそうだった幸福が、スルリとこぼれ落ちていく愁嘆感。それでも全体が幸福感で包まれ、やっぱ本作は傑作の一つだなと、あらためて感じたことでした。

 早乙女愛(兵藤パパ=船越英二の娘役)が本当に子供にしか見えないので、『愛と誠』より何年か前の作品?という気になるのだが、『愛と誠』だからこその芸名であって、そんなことあり得ない。でも本当に子供っぽくて不思議な感じがした。行方知れずとなった兵藤の自宅に詰めてた兵藤勤務先の職員役は室田日出男だったように思うが、違うかな。

22/1/22記

   ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 有楽町のビックカメラの上。昔ここで是枝裕和の『誰も知らない』観た記憶あるけどなあ。角川の映画館だったかなあ。寅さんの傑作選を劇場で観られたことに感謝であります。

  ☆  ☆  ☆

 3人(リリー、寅、兵藤パパ)は、函館本線で北へ向かう。車窓には、並行する国道と、その向こうに海が見える。何にもない、だだっ広い、長万部に向かう、今も同じ光景だ。寅「そうだ、長万部でカニ食おう」。車内放送「まもなく長万部・・・」。3人は長万部で降りたのだ。

 だが続くシーンは、逆光の海岸で戯れる3人。噴火湾に夕日は沈まない。だからこのシーンは、長万部の海岸ではない。積丹半島の方だろう。寝泊まりした駅舎も、長万部駅ではなさそうだ。そうなると、札幌に入るには小樽を経由する。物語の流れでは、小樽には札幌の後に着く。やや矛盾した行程・・・。

  ф  ф  ф

 兵藤パパ「あと7年で定年ですから」。当時の定年は55歳か。てことはパパは48? 今の僕より若いのかよ。まあ、船越英二の実年齢は当時52歳だ。

  Ξ  Ξ  Ξ

 男はつらいよという物語に訪れかけた幸福な結末は、スッと身を交わして去ってゆく。寅自身もそれを逃したことに気づく。リリーの本当の気持ちは決して冗談などではなかったと気づくのだ。

 もしかしたらこの2人は、2人だけの手で、2人だけの関係を築く必要があったのか。結婚という制度や概念に限らず。寅の台詞「あいつは、俺みたいな馬鹿とくっついて幸せになれる訳がない」の含意は深い。やはりさくらはお節介が過ぎた。2人は、「ただの仲の良い友だち」ではなかったにしても。

 そう考えると、リリーからの年賀状で幕を降ろす最終第48作は、本シリーズにふさわしい完結篇であったように思えてくる。まあ、演出家の意図は不明だ。その後も作品を用意してる。

  Ω  Ω  Ω

 寅がラストシーンでマイクロバスに乗り込む。外側に「未完成」と書いてある。函館に実在した伝説的なキャバレーだ。本作の1975年当時はまだ現役(営業中)だったのだ。このとき、寅のたたずむ渚の背後には恵山が見える。あの場所は今だったら「なとわ」の道の駅がある辺りの海岸か。「未完成」のホステスたちは、市内の湯川でなく、わざわざ恵山の温泉郷まで慰安旅行に行くのだと。函館出身の僕(←嘘です)としては、函館で始まった物語が、また函館(←近郊だが)に回帰して終わるのが嬉しいデス。

19/11/16記

(評価:★4)

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