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[コメント] 春の雪(2005/日)

妻夫木君のキスシーンはなぜああも執拗なのか。
ころ阿弥

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







それはさておき、三島由紀夫のあの「春の雪」を、セカチューの行定監督が映画化、と聞いた時、はやりの恋愛物にするのではと感じた。それ以来の不安通りの非常に不満の残る出来。鑑賞後、映画館のロビーでのおばちゃんの一言、「二度寝てしまったわ」。そやねん、なんか盛り上がらない出来やった。妻夫木君のしつこいキスばかりが印象的(それはいいか)。

最初のタイトルが出る時点ですでに雪が降った時、えーっと思った。ラストシーンまで雪は取っておきたかったのだが。彼女が旅行中の兄と見に行ったのだが(変な兄弟)、兄も雪のシーンが多すぎという指摘をしていた。尤も彼は、素肌にサスペンダーは笑ったなどと妙な視点から鑑賞しておったようだが。 小説を読んで以来、綾倉聡子には、聡明で芯のある美しさを持った女性をイメージしていた。竹内結子がキャスティングされたと聞いて、ファンの人には悪いが、やぼったくってとても聡子には、と思っていたのだが、最初に登場するシーンから全然綺麗じゃない。もっともっと初登場のシーンを綺麗に撮らないと。悲劇のヒロインなんですよ、世にも美しい。竹内聡子では萌えません。オーディションをして探すくらいのことはしても良かったんじゃないかなぁ。そこまでの思い入れのある作品ではなかったですか? 決して短い小説では無いのでどのエピソードを入れどれを捨てるかは気になっていたのだけれど、いまいち清顕と聡子の心の動きを描き切れていない流れになっていたか、と思う。ただこの点では健闘していたのかなぁ。 原作との差異と言う点で気になったのは飯沼がばっさりときられていたこと。これは豊饒の海シリーズとしての「春の雪」ではなく、やはり恋愛映画としての「春の雪」を撮ったのだ、ということの表れではありますまいか。それがラストの清顕の台詞、「滝の下でまた会おう」(うろ覚え。手元に「春の雪」文庫本も無し)とその後のラストシーンに如実に表れていたと思う。原作を読んだ人は分かるように、これが豊饒の海シリーズの貫徹したテーマである輪廻転生の鍵となる台詞となり「奔馬」へと続くわけだが、この映画では最後のCGの蝶の戯れとなって幕を閉じることになる。これは上手くまとめたと見ることもできようが、僕は煮え切らないものを感じた。敢えて三島のこの作品に挑むならば腰を据えて豊饒の海全てを映画化する位のことはしてもらいたいと思うし、自分の好きな小説だけに、それが流行の悲恋の物語としてなんとも中途半端に映画化されたことがどうも。うだうだ書いたけど、結局そこなんですけどね。もっと素敵な映画春の雪が見たかった。 2時間30分は長すぎます。

(評価:★1)

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