[コメント] 集金旅行(1957/日)
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岡田茉莉子、佐田啓二の珍道中。岡田は佐田を狙っていて、いろいろモーションかけるが紳士の佐田は逡巡するが相手にしない。最後に慰謝料取ろうと訪れたのは、岡田の処女を暴力で奪ったヤクザもののアチャコ。しかし、「女に惚れて何が悪い」と開き直られ、なんだかんだで岡田とアチャコはデキてしまい、ふたりの延々続く阿波踊りが何か奇怪。
ラストは二人に送られ佐田はひとりフェリーに乗る。「どうしてしっかり放さないでいてくれなかったの。女に恥をかかすものじゃないわ」と岡田は餞別の言葉を送る。悪漢から岡田を守り結ばれる佐田、という通常フォームを転覆させて驚きがある。これを佐田啓二が演るから一層滑稽である。最後に海を茫然と眺めて「無茶苦茶でござりますがな」とアチャコのギャグ呟く佐田は、女は謎だと思ったに違いあるまい。恋愛に定跡はないのであった。
面白いのは中村是好。競輪で買ってスロープに並ぶ叩き売りから女の下着土産に買って、すると妻小林トシ子(25歳差で後に未婚と判る)に駆け落ちされて、恋しさからか買ったシュミーズ着て酒呑んで即死、息子はブラジャー持って寝ていて「母さんのオッパイが恋しいのだろう」と同情される、という小物の見事な三段活用。
一方詰まらないのは見合い相手で嫌がられているのに岡田に付き纏うトニー谷で、最初にヒョットコで踊り岡田に逃げられてもドジョウ掬いで踊っているというハッピーな造形は判るんだけど全然面白くないし、彼のいる面白くない時間帯が長すぎた。何で人気あったのだろう。
小林を訪ね当てるクライマックスは平凡だが、連れてきた子供の引き取りを決断した彼女に、ここまで集金した金をふたりが殆ど(子供のバスケットに入れて)渡してしまうのはいい泣かせ喜劇。駆け落ち相手の兄西村晃は瀬戸内の小島で塩田をしていて、貧乏の象徴のように描かれている。
ほか、桂小金治や大泉滉、伊藤雄之助らは淡々と端役をこなしている。西日本名所巡りも特に発見はない。アパート住民は佐田の出発を日の丸振って見送り、劇伴に陸軍が流れるのが印象的なギャグで、これが身についたフォームの時代だったのだろう。汽車の窓を彩るネオンサインや煙る雨が抽象的でいい美術。『神様のくれた赤ん坊』は設定は同じだが別物。岡田茉莉子松竹専属第1回作品。グランドスコープ。
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