「幽霊を見るの」。ヤンの心の闇の原因は、子供のとき両親から棄てられたことだった。でも、両親との和解によって、彼女は回復に向かい始める。このあたりはかなりあっさりした展開になっているが、必ず何か原因があるということに素直に納得できるし、また、これと反対にどんどんやつれていくジムとの対比がよく強調されていて、彼のトラウマは何なのかも大体理解できる構成になっている。悲鳴を上げる自分の心の声に耳栓をし、誰とも距離を置いて一人ぼっちで頑張ってきたが、それも限界。だれよりも助けを必要としていたのは、疲れ切って、ぼろぼろになったジム、本人だった。

”呼び覚ましてはいけない心の闇！”と、予告編はナレーションしていたけれど、結果的には、そのことが、トラウマから解放されるきっかけになった。この問題をこのまま放置しておいてはいけない、治癒したいという意識が、彼を自殺した恋人の幽霊像を見させたのかもしれないと思い、ひどく切ない気持ちにさせられる。

死ぬまでにたくさんのつらいことや恐ろしいことを経験するけれど、たいていのことは忘れてしまうからやっていける。だけど、どうしても忘れられないで、たまっていくごみを抱いたまま、生きていることも確かで、それが自分で手に負えなくなると、人は助けを求めて他人には奇異に映る行動をするようになるのだろう。ただ、その原因さえわかれば希望があるのだから、やはりあたしたちは、生きていくことをあきらめてはいけないと思う。