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[コメント] 乾いた花(1964/日)

乾いたモノクロ映像美が、心の渇いた男女を見事に描き出す。
AONI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







タイトルの“渇いた花”とは賭博ゲーム「花札」と謎の女「冴子」を意味するのだろう。また、現代人の満たされることのない「心の渇望」を指しているのかもしれない。

満たされぬスリルを追い求めて彷徨う加賀まりこを危なっかしく思っている池部良。しかしながら、己自身も人を殺めるヤクザ稼業に嫌悪感や倦怠感を抱きながらも、それでしか生きている価値を見出せないでいる。

彼女の目の前で最高のスリル“殺し”を見せてやる池部。不器用な男の精一杯な愛情表現だったのだろう。

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池部良が加賀まりこを引き連れて、殺さねばならない相手組長がいる喫茶店へと向かう4分20秒の長回しシーン。本番前のテストでは、長台詞をとちらずに喋るのに精一杯で、演技も上の空だった池辺。しかし、実はそれが本番だったとか。たどたどしい台詞のリズムや歩き方が、逆に殺しに向かう男の感じが出ていたと新人監督・篠田はベテラン俳優・池部に言い放ったそうである。松竹ヌーヴェルバーグ監督の面目躍如といったところか。

(評価:★4)

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