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[コメント] ボウリング・フォー・コロンバイン(2002/カナダ=米)

骨太エンターテイメント、とでも呼びましょうか。 2003年4月13日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







はっきり言って、テレビで偉そうな方々が延々と半永久的に論じ合っているワイドショーだとか、とっても偉いお方が「あいつが悪い!」と批判している姿をテレビで見て、それに賛同する事よりも、この映画を見て自分で考えた方が良いだろう。

予告編にも出ていたが、劇中、最も重要と言うか、一番納得できたのは、マット・ストーンとマリリン・マンソンの言葉。特に、マリリン・マンソンの「俺たちを悪者にすれば都合が良いんだ」という言葉には、かなりの説得力がある。

人は、暴力映画やTVゲーム等を批判する。勿論その中にマリリン・マンソンも含まれていた訳だ。なぜ彼だけが非難される?なぜ暴力映画だけが非難される?劇中に出てきたコメンテーター(?)のような奴は友人(もう友人じゃないけど)にも居る。そいつはやたらに暴力描写の多い映画を否定し、「不道徳的だ」と叫び続け、社会への影響を論じ始める。

そうやって、原因を押し付けた所で犯罪は減っていない。現に、カナダでは市民があれだけ銃を持っているにも関わらず銃撃事件は少ないし、ティーンが暴力映画を好きだからと言って、暴力事件が多い訳じゃない。アメリカでは、映画の規制が厳しいが、それでも事件は起きる。

本当に何が違う?

学校教育が悪い?それとも銃社会が悪い?アメリカが悪い?確かに犯罪を起こした張本人が一番悪いのだが、その人間を生み出したのは誰だ?襲われた事も無いのに、自宅には、弾を装填済みの銃を常時置き自衛する偉大なる(←皮肉ね)チャールトン・へストン様。わざわざ事件が起きた途端に、確信犯的に街へ出向き、大会を催す全米ライフル協会会長様(←皮肉ね)。ライフル協会は何の為に存在するのだ?自衛する市民。しかし、皮肉な事に、その自衛の為に所持している銃器で銃犯罪が増加している。カナダ人民は、それ以上の銃器を所有しているのに、犯罪は少ない。それどころか、家に鍵もかけないのだ。「この街が好き」と言いながら「I LOVE NY」のシャツを着ているのだ!(笑)

何が違う?

コロンバイン高校で乱射事件を起こした少年は、ネットで「ムカツク奴に復讐する」「デカイ街を爆弾で吹っ飛ばして、撃ちまくりてぇ」等と書き込んでいたらしい。さらに、自らをからかって、除け者にしていた人間に「いつか復讐する」と考えてもいたそうだ。

結局、銃乱射事件を起こしたのは、「校内でのいじめ」なのか?それは違うだろう。何かがおかしいんだ。だけど、何かよくわからない。

話は変わるのだが、天才銃器デザイナーに、ジョン・M・ブローニングという人が居る。名前からすぐ思い浮かぶのがブローニングHPだ。他にも、未だに現役としてアメリカ軍に採用されている、大口径主義アメリカの象徴、コルト・ガバメントなどを設計した人だ。その人は、モルモン教徒で、「強力な兵器がたくさん作られれば、抑止力となって戦争は起きにくくなる」と考えて銃器を設計したそうだ。結果的には、彼の設計した銃のお陰で、世界中の戦争で大量殺戮が繰り返されている訳だが。

銃があるから事件が起こり、治安が乱れる。治安が乱れているから、市民は銃で自衛する。しかし、皮肉にもその自衛のお陰で6歳の少年が6歳の少女を銃殺し、犯罪史に残る記録を打ち立てたのだ。

何が違う?よく分からない。だけど、とても面白く自分の為になった映画だ。だけど、「何が違う」かはよく分からない。

チャールトン・へストンは、劇中でマイケル・ムーアに見事に負け、都合が悪くなるとさっさと取材を止めた。彼は「アメリカの歴史」と語っていた。歴史が事件を引き起こす?確かに違う。だったら、何が引き起こす?

結論は、銃があるから事件が起こる。しかし、考えてみて欲しい。劇中、ビル爆破した犯人の兄の農家に監督が訪ねて言った時、「枕の下に44マグナムを置いている」と言っていた。そして、実際に監督は見せてもらい、その時その男は、自らのコメカミに銃口を突きつけたそうだ。ここで、分るのだが、アメリカ人は、自衛の為に銃で武装している割に、銃に関する、最低限の扱いを全く心得ていない。銃を使う人間は不用意にトリガーに指をかけないし、弾が入っている銃を敢えて自分の頭に突きつける行為など、する訳がない。これは最低限のマナーである。

さらに、民兵の射撃場でのインタビューでは、自宅にM16(アメリカ軍正式採用突撃銃)を装備している人も居た。12ゲージ等は自衛としてはオーソドックスなモノなのだろうが、彼は敢えてM16を装備している(ちなみに、民間では殺傷力の関係で、フルオート射撃は出来ないようになっているそうだ)。なぜ、自宅にM16を置く必要がある?戦争でも始めたいのか?

他にも、7丁だとか、6丁だとか保有している人も居た。マイケル・ムーアは言う。「だったら核兵器で自衛しても良いじゃないか」。確かにそうだ。

あの国は、否、襲われた事も無いのに、武装する人々は、恐らく恐怖を利用した販売戦略に見事に騙されているのだろう。黒人の犯罪や、血生臭い事件ばかり報道するメディアも、そしてそのニュースの中でコメントをする著名人の「あいつが悪い」的発言も、全て銃の販売戦略を捉えてもおかしくないだろう。そして、銃を買いに行けば、簡単に、合法的に手に入る。誰でもだ。そして、いざ事件が起きると、爪切りを所持していただけで停学処分。

そんな事で物事の根本が解決すると思っているのか?

俺は、映画を見ていて、マリリン・マンソンの言葉に激しく感動し、カタルシスまで覚えた。嫌悪感等抱くわけが無い。彼は「本当の事」を言っているのだ。ラストの全米ライフル協会会長のインタビューだって、そうだ。嫌悪感等抱く訳が無い。

何が違う?

銃があるから犯罪が起こる?

では、銃が無ければ犯罪は起きないのか?

それは違う。人間が居るから犯罪があるのだ。

と、変な結論に辿り着いてしまったけど、この映画を見終わって劇場を後にする時、女性が「結構ギャグっぽい所もあったよね」と話をしていた。何か勘違いしているようだ。この映画がギャグではなく、痛烈に批判した風刺映画で、その風刺があまりに絶妙なので笑いが込み上げるのだ。特に、銃を持った犬や、環境汚染に対する質問を投げかける時もそうだ。

結局、メディアがキチガイ(失礼)なんじゃないのか?「警察24時」みたいな番組のプロデューサのインタビューの時だってそう感じた。

―――追加 2003年4月19日

どうでもいいんですが、今世界史の勉強で世界史やっています(謎) で、オランダ人はアステカ帝国か何かを滅ぼす時に、馬や鉄砲を使い圧倒し、さらに伝染病を用いたらしいです。 この時代にすでに、ヨーロッパ人は生物化学兵器を使用していたのです。 さらに、圧巻なのは、彼らはしょっちゅうアジア諸国にケンカを売っているのです。清に阿片を一方的に売り、断られれば攻撃する。 その利己的な思想は一体どこから生まれたのでしょう? それは、もう少し遡った所に真実があります。 なんと、彼らは、アヘン戦争以前に、何度かアジア近辺を植民地にしたり、攻撃したりしています。 なぜか? 彼らはただ、コショウ(香辛料)が欲しかっただけです。 コショウ一振りで戦争が起きたんですね。

えっ?だから何か?いや、別にどうでもいいんですけど、この前『ボウリング・フォー・コロンバイン』を見ていて、とことん白人ってバカだなぁって思いまして・・・。

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