[コメント] 活きる(1994/香港=中国)
これだけオブラートに包んでも、あれだけタブーを避けても、中国では検閲に通らない。大河ドラマも良いが、サスペンス映画としても一級である?
人民は常に山盛りの食事を摂っていた。中国共産主義の偉大なる成果だろうに。隣国の北朝鮮のように飢えはしなかった。
世界の変革にも関わらず、毛主席の肖像と赤い旗は今でも北京に翻っているのに。
さらに、現役の解放軍部隊が撮影に協力していても検閲に通らない。
もったいない。4人組による文化大革命という「恥ずべき時代」を描いてはいても、王先生を死なせずに生き延びさせた事で「進歩」を選択したのだと「失政」を描いているのに、もったいない。
何の予備知識もなく鑑賞したら、ふっと共産主義に心が揺らいでしまいかねない程、親中国的な作品なのに、もったいない。
いったい何が不満なんだろう?
もしや、「天安門事件」にまで踏み込んで描く事を期待しているのか?「たいした事件じゃぁなかった。この一家はそれでも懸命に活きて、幸せです」という具合に描く事を期待したのか?
この国の歴史を多少なりとも知っている身にはサスペンス映画のような不安感が常時付き纏っていて、かなり緊張して鑑賞した。
国民党<共産軍<4人組<束の間の改革<天安門事件。こういっためまぐるしい価値観の変化が、ジェットコースターのように襲ってくるのを知っていると、この家族の幸せがどこで途切れるのだろうか?そればかり心配してみていたのだ。
ともあれ一家族の大河ドラマとしての出来は上質である。所々に挿入されるささやかなユーモアが作品にアクセントを付け、それが哀しみを増長させると同時に人々の活力をも上手に表していると感じた。
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