コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ロード・オブ・ザ・リング(2001/米=ニュージーランド)

「私たちは生きながらにして「伝説」です(ってことになってるみたいです)。」(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







退屈はしなかった。大作が苦手な私でもまずまず楽しめたと思う。ただいまいち乗り切れなかったというのも事実。

どうしてなのか自分なりに理由を考えたが、おそらくは他の方も指摘されていたことだが、あまりにもエピソードの一つ一つが伝説然としていて、一応現在進行形で語られているはずなのに、どうしてもそこで生きる人たちの息吹が感じられないところにあったかと思う。ガンダルフはあそこで落ちるべくして落ちたし、ボロミアはあそこで果てるべくして果てた。どんなジャンルであるにしろ、映画はどこか一面においてエモーショナルなものであってほしいと思うのだが、本作での「別れ」にはそうした要素が感じられなかった。(映画の話中で何らかの「伝説」が引用され、それを基にその「伝説」が繰り返されるというテーゼは好きなのだが、本作のように「伝説」そのものを、そこにあって当然であるかのようにやられるのはいただけない。)

原作があるのだから仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、映画化するなら何らかの解釈を施してほしいと思う。忠実に世界観を表現(再現)するのも大事な作業ではあるが、そこだけにしか労力を傾注しないなら、小説を上回るものが生まれ出てくることは期待しがたい。小説では不可能な、映画にしかできない表現手法がある。原作があったとしても、そこに作家性を強く反映させてほしいと思う。むろん本作においても監督ピーター・ジャクソンの作家性は発揮されていたのかもしれないが、それはえんえんと語られる「伝説」の重力の前に打ち消されているように映った。テキストのイメージ具現化にすぎないならあまりそこに魅力は感じられない。むしろ原作者を怒らせるぐらい、強烈な作家性が打ち出された作品のほうに魅力を感じるし、製作者には原作を上回るものを見せてやるんだという気概こそを見せてほしい(もちろん気概といっても、口先ではなく作品そのもので見せてほしい。極端な話、外で鼻くそほじりながら傲慢にインタビューに応えていたとしても、作品で魅せてくれればそれでいいと思う。)

とはいえ、ラストについては好印象。集団が崩壊し不信感や目的喪失に苛まれるなか、それでも人が人に何かを為しうることを見せ、進んでいく意気込みを示して終わらせるのは、いい閉じ方だと思った。(「キン肉マン」以外のゆでたまご作品なんかのほうがもっと中途半端な終わり方をしている、ってそれはどうでもいいことだが。)むしろ完結せずに継続していく話にしかありえない、それ独自の魅力があった。『ゴッドファーザー』の続編を観るまでに三年を要した私は、ここらへんで「旅」を気持ちよく終わらせておこうと思う(たぶん)。

*本作についての百花繚乱のコメント群を読んでいるとついつい忘れがちになるが、他方で原作の映画化を拒否し映画を観ていない人も結構いたりするものだろうか。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。