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[コメント] クローン(2001/米)

コメンテーターのみなさん、落ち着いて。この作品の原作は短編なのです。しかも原作を越える作品などというものは期待してはいけないのです。そういう理解のもとで見れば、ほら「よくできた作品」じゃないですか。
BRAVO30000W!

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







役者を浮き立たせる演出をしていないところに先ず一票。役者あっての作品だし、ファンが役者目当てで作品を観るのもわかるが、この演出はこれだけの濃い(厳密に言えば中濃ってとこか)役者陣を必要以上に目立たせていないように見える。つまりゲイリー・シニーズとしては目立たないが、スペンサーとしては目立つ、というようなカンジだ。

マデリーン・ストウの登場比率もファンにとっては不満もあるだろうが、彼女は美しくあっても演技のほどは一級品とは言えない、と思う。あのラインがギリギリだろう。充分存在感は残せたと思うぞ。

それと本編に登場した大小のガジェット類。派手なものこそ少ないが、作りは丁寧だ。これまたイマイチ人気のない『シックス・デイ』も観客を突き放すほどガジェット類にこだわりを見せていたが、本作品は地味なところにも気合入れていて素晴らしい。確かに斬新さはないが、過去の作品や近年の作品の同様のガジェットと比べてみなさい。ここまで客が見逃すようなところまで精巧に作っているB級作品もないぞ。

で、小道具と言うのはバカにできないところが多く、そこらへんの気合の入れ方で映画のリアリティというものが変わってくる。「映画」の「リアリティ」でなく「映画のリアリティ」である。虚実バランス良くちりばめるのが映画、特にSF映画においてはポイントとなるところで、宇宙人が地球侵略してクローン人間に爆弾抱えさせて潜り込ませる、っていうとてつもない嘘を提唱しつつ、物語を進行させなければならないのだ。ガジェット類に気合を入れると、その大嘘の世界のリアリティが成立するのだ。成立しないよ、という人は、今後このテの作品はどれを見てもつまらないと思うので、見なくてよろしい。

大体、今回の一番の大罪は邦題にあるかもしれない。本編では一言も「クローン」って言葉は出てこなかったぞ。DNA合成したサイボーグと言っている。サイボーグというのもかっとんでるが、クローンとかいうよりマシだ。よりコピーっぽいし、クローンにまつわるリアリティはどうでもよくなる(記憶のコピーとか、細胞の成長とか)。

海外も含めてこの作品に対する評価は低い。その多くは「ありきたり」「原作を越えていない」「ラストがよくわからん(何故自爆したか)」などがその大半を占めるが、短編作品を原作にした段階で、いわゆる大作の添え物という意味合いのB級映画になるわけだから、見る方もとんでもなく凄いものを期待してはイケナイ。

褒めてんだか貶してんだか自分でもわからんが、個人的解釈を付け加えさせていただくと、この作品は「インテリで優秀な科学者は、世界が目の敵にしている宇宙人に父親も殺され、いつか敵をとってやるとばかりに勉強して巨大兵器を開発した本末転倒な男」「とんでもない地球侵略をしてくる宇宙人とも無闇に戦争してはいけないと考える反戦家というのはいるだろうし、そいつらも本末転倒である」「無垢で生きることに正直な貧者たちは、いつでも生きることに必死で、結局は生き延びる。戦争で何がどうなっているのか詳しいことは知らないが、管理はされたくない」という人間に対しての皮肉満載という印象がある。

自分は間違っていない、と最後まで主張していた人間も、その主張が正しくないとわかった瞬間爆発してしまうのだ。まぁ、原作にある自爆のキーワードを口ずさむあたりはあまり整合性(必然性)がとれていないのだが、とにかく「自滅」するのだ。

まぁ、ガジェット満載という時点で満足していたので、それだけでもいいです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)トシ[*] peacefullife[*] らいてふ

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