刑事として対峙すべき相手は犯人であって、レイプ犯の悪役ではないはず。イーストウッドのハリー観を作品に昇華させた点は面白いが、そのために女性のレイプ事件を絡めたのは、少し安易だった気がする。ハリーがどういう人間かを描くのに、女性を使うのは大変分かりやすい反面、危険でもある。もし犯人（＝被害者）が、かよわい女性じゃなくても、ハリーは同じようにしたのか、その女性と親しくなくてもそうしたのか、と質問したくなるからだ。この質問の答が知りたいのではなく、そういう疑問を抱かせる描き方がいただけない。

レイプの回想シーンは、遊園地という狂気に満ちたシチュエーションがものすごく恐ろしかった。この映画は、いわゆる被害者の人権問題を扱っていて、あんな目にあわされて復讐するなとはとても言えない。でも、その行為に目をつぶれと要求する神経は、ちょっと理解できなかった。