[コメント] 千と千尋の神隠し(2001/日)
批評に困る作品
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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これほど批評に困る作品も珍しいのではないか。なぜならこの不思議で魅力的な世界は、論理的な説明というものをほとんど受け付けないからだ。
何故千は、川の神がくれた泥団子を、万病に効く霊薬だと思い込んだのか?海の上を走る列車の行き先は?何故行ったきりで帰りの列車がないのか?カオナシって?いったい魔法のはんことは何に使うものなのか?
これらの問いに、もっともらしい答えを与えることはおそらく可能であったはずなのに、宮崎監督はそれを拒否した。おかげで僕たちは、この頼りなげな十歳の少女とともに、彷徨い、働き、悲しみ、笑う羽目となる。そして千がこの世界での立ち位置を獲得していくと同時に、僕たちにもこの世界の輪郭というものがはっきりとしてくるのだ。論理的にではなく、あくまで感覚として。
そして映画が終わるころには、僕たちは千=千尋とともに、しっかりとした「世界」を獲得しているだろう。決して知りえない世界があることを知ることで、僕たちは、自分たちが生きていくこの世界の手触りを、思い出すのかもしれない。
宮崎監督はこの作品を「十歳の少女のために作った」と語った。しかしこの映画を見終わった人は、十歳の少女になってひとつの冒険をしてきた自分を発見するだろう。ファンタジーの底力を見せ付ける、傑作である。
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