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[コメント] A.I.(2001/米)

一般的に言われているよりずっとこの映画は、キューブリックとスピルバーグの幸せな融合だと思う。
Carol Anne

 スピルバーグのと言うより、キューブリックの生涯最高到達点が、この映画だと思った。

 逆説的な記号を並べて見せて、本質をえぐり出そうとするのがキューブリックのいつものやり方。エンターテイメントとしての膨らみより、スタイリッシュな構築美を優先する「芸術家」としての映画作りをし続けてきたキューブリックに、「ファンタジー」という最高の「題材」が出会って紡ぎ出された、最高傑作の脚本に、スピルバーグが魂を吹き込んだのが、この映画の成り立ちだと言える。

 人はなぜ「ファンタジー」を必要とするのか、「死」の象徴であるロボットが希求する「生」への渇望を描き続ける事で、「生」の意味と、「ファンタジー」の奥底に眠る「死」の影を白日の下に晒して見せている。それは、我々が認知しうる「生」の意味が絶えず「死」の影によってのみ証明されうるものである事の、一つの露頭。

 我々が「存在ではないもの」を信じられ、それを「大事」だと感じる根本の意味を、「ファンタジー」を通して語るのに、それの根源までさかのぼって「贖罪」の意味から語り起こそうとしたのが、この脚本の本当のところだと思う。

 「2001年」に出てくるコンピューターの「ハル」が、デイビットの原型だとしても、一番似ている構造性の映画は、むしろ、「時計仕掛けのオレンジ」の方。でも、映画としての意味合いも脚本の質的にも、こちらの方が数段上。

 ファンタジーの巨匠、スピルバーグが撮ったと言うのも、キューブリック的逆説表現の一つ?ただ、飛躍後描写が、少し甘すぎるのは、キューブリック脚本に眠る贖罪的要素を、スピルバーグが誇大に捕らえすぎたせいだと思う。

(評価:★5)

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