こういう話は実際の戦場でもあり得なくない話だと思う。同じ人間であり、さらには同じ民族である韓国人と北朝鮮人。ふとしたことから、例え敵同士であっても友情が芽生えるということは考えられる。朝鮮戦争により分断された朝鮮半島が、もし分断されずに元来のようにひとつの国であったら、なんに問題も無く接することが出来ただろう。しかし、ひとつは民主主義、もう一方は共産主義と、国家体制の全く違う二つの国家に分断されているが故に、同じ民族であっても敵対し、容易く接することが出来ない。事実が重くのしかかっている。この映画を見ると、韓国の南北分断の悲惨さが良く伝わってくる。南北それぞれの軍人たちの友情を通して・・・。

　ものすごく真摯に迫る映画なのだが、映画として欠ける部分がある。まず、ものすごく流れが悪い。真実を覆うために前半の描写は希薄になりがちだし、中盤に回想シーンを投入したことでサスペンスとしての流れが完全に断ち切られた。回想シーンでチョコパイのエピソードなどの微笑ましいシーンが存在するのだが、これらの南北軍人の間の友情関係を中心に見せる映画とすれば、捜査などのサスペンス要素は削っても良かったのでは？それでもこの映画のメッセージは十分に伝わってきただろう。さらに、細かな演出を見るとあまり巧みさは感じられない。冒頭に登場したフクロウに関してもだが、質自体を下げているような部分も否めない。そして、ラストシーンについてだが、自殺までする意味があったのか？これが非常に腑に落ちない。ハッピーエンドにされるのも首を捻るが、自殺までする必要を自分は感じなかった。自殺が無くても、この映画が揚げるテーマはしっかり伝わってきたと思う。

　テーマや題材を見ても興味を惹かれ、内容も感じることが多かった作品だったが、さらに良くなったとも感じさせられる。秀作だが、非常に惜しい部分がある。