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[コメント] 雨(1932/米)

主題の提示にとどまる範疇で心理劇の緻密さには欠けるSO-SOドラマ
junojuna

 映画の特徴的文体である神様視点ゆえにサマセット・モームによる原作の煩悶性を描ききれていない悪く言えば「なぞり」の映画化といった出来である。南海の孤島、雨といったシチュエーションに閉塞感を投影し、未開と先進という対比関係にドラマを提示する設定は確かに高度といえるが、しかしそれは原作のもつ舞台設定を配置したにすぎず、映画化されることにおいての二次的な生産性が見られない点でマイルストンの作劇を褒めるには至らない。こうした観念的な葛藤の図式がドラマとなる作品ではやはり主人公(ここでは、サディとデヴィッドソン牧師)の内面描写に神経の咎が垣間見られるような視点が必要である。とくに対峙する二人の間に介在するアンバランスな緊迫感といった描写がいまひとつ足りず、マイルストンの巧みな操作というものが見当たらない鳴かず飛ばずの結果となった。これで名画とは呼び難い。

(評価:★3)

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