[コメント] アタラント号(1934/仏)
きわめて乱暴な物云いであることを承知で敢えて云うと、『新学期・操行ゼロ』が「撮影」の映画であるのに対して、これは「演出」の映画だ。「ねこ」の扱いの面白さにかけては私が生涯に見た全映画の中でこれが一番。ねこがどこからともなくわらわらと涌いて出る! ミシェル・シモンの背中にしがみつく! 宙を舞う!
一人レスリング。指レコード。水中幻影。ベッド・クロスカッティング。驚愕の演出アイデアがこれでもかと詰め込まれている。
あるいは、愛すべきキャラクタたち。喧嘩もノロケにしかみえない新婚夫婦。アメリカ女優のような顔立ちをした妻ディタ・パルロの溌剌。パルロが消えた後の夫ジャン・ダステの腑抜けぶり。異形の俳優ミシェル・シモンが垣間見せる底無しの優しさ。ヒューマニズムなんていうものを信じられるようになるのは、こういう映画を見たときだ。
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