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[コメント] 鬼戦車T34(1965/露)

戦車の恐ろしさとは、街を走り、銃を向ける人々を蹴散らすところにある。それが出来てるって事だけで充分すぎ。格好良いぞ!
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 1942年の実話を元に映画化した戦争映画にしてソ連製国策映画。実話を元に、かなりリアリティのある作品に仕上がっている。まあ、実際の話テンポはあんまり良くないけど、全編が妙にユーモラスだし、カメラ・ワークもなかなか見事。特に女性捕虜との交流とか、お花畑の中を疾走するT−34の雄志など、映像的に見るべき部分は多い。悪意を持って見る限り、ラストは出来すぎな印象も受けるが、こういった虚しさの強調はとても好み。

 標的用だと言う設定だから実包は積んでないが、町の中を闊歩する戦車の雄志は感動的なものがある。

 以降くだらん蘊蓄を少々。

 第2次世界大戦、殊にヨーロッパ戦線においては機動力の主体、戦車が非常に有効な兵器として用いられたが、その中でも名機と呼ばれる戦車がいくつかある。最も有名なのはドイツ製のティーガー(呼び方は様々。ティーゲルだったり、タイガーだったり)。これは大戦中の最強戦車の誉れが高い高性能の重戦車。それに対し、もう一つ挙げろと言ったら、やはりこのT−34と言うことになるだろう。ティーガーが単体としての性能を追求したのに対し、T−34は全くベクトルが違い、とにかく比較的安価で量産のしやすさ(ソ連のT−34生産ラインは1941年につぶれてしまうのだが、設計図を元に急造ラインから更に多くの車両が生産された)と簡易な操作能力、スピード(T−34の基本設計の元になったのは高速戦車であるBT戦車。その速度をそこそこ保ちながらも装甲を増し、重砲が積めるようにと言うのが基本コンセプト)、多用途への転用(事実T−34は膨大な数の派生型があり、主力戦車でありながら、偵察車両や工兵車両、果ては兵員輸送車両に至るまで様々に用いられた)に重点が置かれた。それに見合うだけの性能を持っていたT−34(T−34/76)はものすごい数が生産されるに至る。この戦車が対ドイツ戦線の勝敗を決したとまで言われる。旧ソ連はアサルトライフルの名銃AK-47(カラシニコフ)であれ、T−34であれ、安価で性能の高い兵器を作るのに秀でていた。事実T−34/76の改良型であるT−34/85は現在でも中国などでは現役で使われている。

(評価:★4)

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