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[コメント] お熱いのがお好き(1959/米)

ワイルダーのコメディを超えたところのレモンを起用した人生の戯画化が、モンローを相手に昇華しきれなかったSO-SO作品
junojuna

マリリン・モンローが太いなぁという印象とともに、彼女の当時の決して幸せではなかった人生の影が浮かび上がる、往年の名作コメディ作品という以上に不思議な感慨をもって迫る本作。マリリンの魅力とは何だろう?本作で見られる彼女の肢体は、ズングリムックリのムチムチという印象で、男性視点からいえば好みを左右しそうなルックスであるし、多くの女性相手には、その品のなさをとって決して好まれそうにない感じである。当時、マリリン・モンローは実生活での辛酸に、意気消沈していたという時期であった。それゆえか画面からはすでにマリリンの薄幸な人生の側面が浮かび上がり、なんとも晦渋じみて陽気に浮かれてはいられない様相を呈している。ワイルダー映画は、実に巧みな演出力で、男性、女性のマーケットを選ばない広さを持っていることはその通りなのだが、本作を見て、ワイルダー映画の本懐は男のファンタジーなのだということを感得した。コメディアクター、ジャック・レモンに託される躁病的ドラマ空間に敷かれる男の哀愁に、どこか親和性を見せるマリリン・モンロー、シャーリー・マクレーンという女優達。この場合、マリリン・モンローだとその肢体の存在があまりにも強烈なので、哀愁という前提から展開されるファンタジーに限界が生まれているのである。また、マリリン・モンローを起用しながら、バディ・ムービーとしての展開を配するあたり、当時の製作状況の慎重ぶりがうかがえる。マリリンのアイドル映画なのか、ワイルダー映画なのか。やはり二兎を追う形となり、映画髄を堪能することができなかった。

(評価:★3)

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