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[コメント] タイム・マシン 80万年後の世界へ(1960/米)

人類の未来にユートピアはあるのか?現実社会の差別問題を強烈に批判したタイムトラベル映画の元祖であり、傑作。
さいた

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







中世ヨーロッパは貴族階級が労働者階級を支配していた時代です。貴族は土地の私有権を持ち、労働者階級から税金を貪りとって優雅な生活を送っていました。生まれながらにして階級が決まってしまう差別制度を、H.G.ウェルズは80万年後の人類、イーロイ族とモーロック族に例えて描いたのです。80万年後に旅だった主人公のジョージが、いとも簡単にモーロック族に対して勝利してしまう展開には甚だ疑問が残りますが、現実社会の貴族制度を撤廃したいと言うH.G.ウェルズの主張が痛いほど伝わってくる事で帳消しにしたいと思います。

日本でも明治四年、太政官布告により開放されるまでは、”士農工商穢多非人”と言う人間を差別する制度が平然と行われていました。しかし名目上開放されたとはいえ、現在も部落問題としてその火種は燻り続けています。太政官布告から百年以上も経っているのに、何故こんなに根が深いのかが信じられません。そして蝦夷(北海道)のアイヌ民族に対しても、日本人としては当然権利がある土地の所有権を与えないという差別がありました。悲しいかな、現在でも「タイムマシン」という作品は、このような日本人にも警鐘を鳴らし続けています。それは人類にとって本当のユートピアが訪れる時、そう、差別が無くなる日まで・・・。

DVDの特典映像では、親友のフィルビーが戦死する事を知ったジョージが、フィルビーが出兵する日にタイムトラベルして戦場に行く事を阻止するエピソードが入っています。このエピソードが本作に挿入されていたとしたら、もっと見応えがあった作品になっていたと思います。未見の方は是非御覧あれ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)荒馬大介[*] ガブリエルアン・カットグラ[*]

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