途中、池脇が失恋した相手は唯野未歩子だと勘違いした（だって弟が腹違いだと説明されるのはそれ以降だもの）が、この方が面白かったのではないか。難しい愛情の形としていい対比だし、甘え口調な池脇のキャラにも合っている。収拾はつかないだろうけど。

伊勢谷の場面に限ってつまらないのはどうした訳だろう。これは俳優のせいじゃなく演出のせいだ。自分で書いた記憶のあるはずのない（現代でも繋がるのだから）電話帳を使うのはおかしいし、年表の発見の前に日記帳は読むだろうし、カーテンに包まる件などもっと切迫していてほしい。交差点や屋根の上はいい感じだが遅かりし。そもそも単にキャラの設定を好々爺風より、序盤に匂わせた偏屈爺で通したほうがよかったのじゃないだろうか。

記憶障害の老人の話と観れば興味深いし、「同情と愛情はどう違うのよ」という科白はある極端に達していて優れている。この世界を、失恋の気の迷いにするのではなく、もっと正面から深掘りしてほしかった。