[コメント] マン・オン・ザ・ムーン(1999/米)
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少なくとも“まともな人”という範疇からはかけ離れた人物で、常識や社会といったものから完全に自由でいようとした人物であった事は確かだ。
人を笑わせる職業というのは精神的に非常にすり減らすとも言われているが、時としてそれが過激化することがある。ギャグというのは常識に根ざした部分は確かに重要だが、常識と非常識の兼ね合いから生まれてくるものなので、ほんの僅か非常識の方に足を踏み入れたら、それだけでとんでもない存在になってしまいがちだから。
カウフマンとは、そのような非常識部分が少々…完全に行きすぎてしまった人物なのだろう。最初はサービス精神で過激なことをやっていったら、それが妙に受けてしまい、やがて自分自身でギャグの限界を突破しようとしてしまった。その際にバランスを崩してしまった人物なのではなかったと思う。少なくとも、同時代のアメリカで彼を観ていたら、真っ先に私はテレビのチャンネルを変えただろう。
でも、そんな嫌われ者だからこそ、伝説になっていくのかもしれない。本作は実は伝記ではなく、伝説を描いた作品だったとも言える。
そしてその狂気性とは、主演のジム・キャリー自身が持っているものなのかもしれない。彼は世界的なコメディアンではあるが、かなり重度の躁鬱症を患っており、映画の出演も飛び飛びになってしまうのもそのせいだと言われている。
そんな彼だからこそ、この役には並々ならぬ思い入れがあったのではないだろうか? カウフマンはキャリーにとって、憧れの存在であり、同時に自分がこうなってしまうことの恐怖感を感じさせる存在だったのかもしれない。
そう考えてみると、本作のキャリーははまり役だった。役を通してキャリー自身が透けて見えるかのような気にさせてくれる。
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