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[コメント] 氷壁(1958/日)

マスムラ劇画がいけない方へ転んで余りにも元祖大映テレビ。ベストショットは断然山本富士子の破廉恥なネグリジェ。なお、『妻は告白する』と混同させられるが全然別の話。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ともかく氷壁のセットが安い。実写とセットが交互に映されるのだが、実写の冬山がなまじっか美しいものだから、セットがとても間抜けに見える。撮影もアップが多くて貧しいし、転落の人形は人形にしか見えない。これは、メジャーで撮られた最悪の転落映像ではないだろうか。あの人形を川崎敬三だと思うには努力がいるだろう。子供が見たらなぜ川崎が落ちずに人形が落ちるのだと訝しがること必定である。

山本も野添ひとみも厚化粧で魅力を欠くのはフィルムの退色のせいもあったのだろうか。終盤にきて突然に山本と菅原謙二が惹かれ合う仲だと明かされる展開はバカバカしく、いつの間に三角関係になったのかまるで判らないまま、雪山で左右にふたりの幻影を見ながら果てる菅原の最期は大映ドラマでないとあり得ない恥ずかしさ。原作が下らないのか、新藤のホンが穴が開いていたのか、現場での改編が凶と出たのか。

上原謙の茶に入った芥を指で摘まんで捨てる山本の描写と続く嫌味の飛ばし合いは面白い。山茶花究の社長の演説癖もマスムラ劇画の好ましい側面というべきだろうか。ただ、企業の評判(ナイロンザイルは切れないという)が菅原の証言と対立し、実験により企業が正しいと判って菅原が窮地に立たされるのだが、この窮地も山茶花の駄弁でぐちゃぐちゃになって主題に浮上しないままに終わる印象である。上原は「原子力作業会議」とやらに出席するキャラで、作品は原子力政策も疑いの目で見ているのが当時の原子力礼賛の時代にしては新しいと見えるのだが、深堀はなかった。

(評価:★2)

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