[コメント] マグノリア(1999/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本質的なことについて何一つまともなコメントができないので、トム・クルーズの役フランク・マッキーについてひとつだけ思ったこと。
マッキーはモノリスか、ヒトザルか。
『2001年宇宙の旅』で誰もが知るあれをBGMに暗闇から突如現れたトム・クルーズ。(とりあえず爆笑。)最初、彼の全壊の教祖ぶりを見ながら、ああなるほど、彼は要するにこの小さな社会(「Seduce & Destroy」会)の中におけるモノリスなのかなと思った。つまり、何も知らないか弱いサル達(会員)を「啓蒙」し、武器を使って攻撃することを覚えさせ、ライオン(女性)とわたり合える術を与えているのだ、と。
しかし、観ているうちに、実は一歩Seduce & Destroy会という公的な持ち場を離れると、フランク自身がか弱いサルであることがわかってくる。父親に対する「複雑」などという言葉では表せないほど複雑な憎しみと困惑と愛情の混ざった感情を抱え、その感情から自らを守る術もなく彼は苦しんでいる。だが、この映画のいう「本当に起こってしまった偶然」の一部を成す介護士フィルからの電話(彼にとっての「モノリス」)をきっかけに、彼ははじめて父親、そして何より自分自身の気持ちと向き合うことができた。彼が父親の死にゆくベッドの脇で自分の両手を固く握り締めながら、父親を許せたのかどうかはわからない。いや、おそらくそれはできなかったのだろう。だが、自分自身の気持ちと向き合ったことで彼の中で確実に何かが変わったはずだ。宗教的な悟りに近いものかもしれないし、全く違ったものかもしれない。それを『2001年』にいう進化と呼べるかはわからない(し、正直本当はどうでもいいことでもある)が。
当然ながら勝手な解釈の域を出ないが、トム・クルーズがこの映画でモノリスとヒトザル、一人二役をこなしたような気がしてならない。あのBGMに勝手な解釈をつけて勝手に納得したところで、この映画の評価は依然としてぼくを悩ませているのだけれど。
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