[コメント] 化石の森(1973/日)
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身の廻りはみんな絶望的と確認し続ける、殆ど居た堪れないような作品。こんな劇を物するのはある意味簡単なものだろうと思わされる。登場人物全員バカというシニカル劇は60年代から大量にあるが、この流行を極めようと競争でもしていたのだろう。感情移入で映画を観るのは苦手なのだが、ここまで反感しか呼ばない登場人物が並ぶと何いうか、圧巻だった。要するにつうまらない人間たちをつまらなく描いて時代の典型としている。
子供の目が見えなくなってバチが当たったと云う八木昌子とか、彼女のヨロメキとか、酔っ払い亭主日下武史(いい味出しているが)、岸田森のどうでもいい教祖、実にろくでもない連中しか出てこないものだ。人間に対する不感症が文学的と勘違いされたのだろう。こういう描写群を見ると、水俣病患者を前にした石原環境大臣の失礼な態度が重い浮かぶ。篠田も同じようなものなんだろう。
二宮さよ子が殺害する勤め先のマスターが男なのにマニキュア(ペディキュアも)している、という風俗はあったのかなかったのかよく知らないが、アプレのなれの果てというニュアンスがあるのだろう。彼女の殺人告白を聞いて逃げちゃう恋人の萩原健一の軽佻さが情けない。決断できない軟弱ものの嘲りは決断する戦前派杉村春子と対照される。これらは作者の戦後民主主義の否定、戦前回帰路線の一環なのだろう。二宮の殺人を告白して杉村は喉の加湿器に毒入れて死ぬのだろう。クリスティみたいな外国の推理劇のパクリだろう。
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