[コメント] 絶唱(1966/日)
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地主の志村喬死去にあたって、これは云わざるを得ないという調子で思わず漏らしてしまう恨み節。これは名演だった。
志村は舟木一夫に勘当の理由を告げる。「お前に思想が取りついた。これだけは金がモノを云わんでな」。襖絵で寒山拾得が奇怪に笑っているのが皮肉。志村が友人を使って舟木は改心した、こちらには帰ってこないと和泉雅子を騙す件は酷い。実に腹立つ親爺であった。
和泉雅子の私的ベストショットは木挽歌の独唱、なんで障子を開け閉めしながら唄うのだろう。若様たぶらかす「魔性がある」と云われるのがよく判る。「若様が来なある」と遠方からの舟木接近を察知する超能力の件が二度繰り返されるが、それも不自然ではないのだった。このような男女による村の救済はおとぎ話に近い。
遺体の結婚式、舟木の小作たちへの詫びは、千年単位で続いた地主小作制度の終焉に相応しい儀式だと見えた。農地解放は占領軍によってなされたが、内的な必然性もあったのだと本作は語っている。復古趣味の論者も地主制の復活だけは云わない。今に云い出すかも知れんが。
和泉の「恥ずかしいげに」が可愛い。原作者の出身から見て、この「きに」「けに」は長野ではなくて鳥取西部の方言でいいのだろうか。イモトアヤコが作者と同じ伯耆町の出身の由。ギャグに走らない舟木は好感度大で、当時モテたのが私は本作で初めて判った。タカピーな太田雅子の造形は桑野通子みたい。
なお、クランクイン前のプレス発表以降、滝沢修→志村喬、奈良岡朋子→初井言栄、初井→福田トヨという配役変更があった模様。本作は単独上映作で興行年間2位。『愛と死をみつめて』は64年。
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