[コメント] 座頭市と用心棒(1970/日)
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実を言うと、私がこのシリーズを観始めたのはこれが最初だった…しかし、これはどっちかというと、外伝的な要素が強い作品だと今になってみるとよく分かるのだが、本当にこれは面白かった。
タイトル通り、座頭市と戦うのは『用心棒』(1961)の三船敏郎(当たり前だが、三十郎本人ではない)!座頭市と用心棒の戦い!これは燃えなきゃ嘘ってもんだ。逆に言えばこれだけ難しい設定をよくやる気になったもんだな。
とにかくパワーそのものがあふれるかのような作品で、殺陣の凄まじさ、キャラクターの立ち具合、そして緊張感の中に見え隠れする笑いと虚しさの演出。これはもはや『座頭市』でも『用心棒』でもない。完全に岡本喜八の世界に他ならない。というか、これほど喜八節がバランスよくまとめられた作品は他に類を見ないだろう。正直、これは驚き!
まずキャラクターに関しては、歳食ったとはいえ、流石世界の三船。無茶苦茶キャラが立ってたし(まあ、ちょっと弱さが強調されすぎてたきらいがあったが)、それに対する勝新太郎の座頭市も、ほかのシリーズと較べ、更に人間的弱さが強調されていた。どちらも本来正義という義務感によって立っているのに、実は結構これで欲深いところがあって、最後の戦いなんかは意地と言うよりは、どちらがどちらを出し抜いて砂金を手に入れるかというところが強調されていた。更にそこに岸田森扮する不気味な九頭竜が絡む。キャラの立ち具合で言えば、最早言うことないほど。若尾文子もしっかりキャラクタを強調していたしね。こりゃ、タイトルは『座頭市と用心棒』じゃなくて『バケモノVSケダモノVS吸血鬼』とでもした方がはまってたかも(笑)
ストーリーに関しては、全般的に笑いの要素が大きい作品なのだが(シリアスが多い本シリーズでは間違いなく異色)。身障者を敢えて笑いの俎上に持ってきて、しかも嫌味でないバランスの良さを持つし、しかも金に群がる人の群れの浅ましさのなんと凄まじきことよ。人間よりも金の方が重要だって精神の浅ましさが、これまでか!とまで無茶苦茶現れてた。笑いとシリアスと虚しさ。すべてがぶち込まれてる!ここまでバランス良い物語とは。
演出に関して言えば、これはまあ、シリーズ通しての事だが、これも充分と言えるだろう。これに関してはシリーズとしては並とも言えるけど、それでも質的には非常に高い。
人間の欲というのはほんとに果てしない。その薄ら寒さまで演出した、これこそが監督の実力だ。だからこそ好きなんだよな。この監督は。
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