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[コメント] 座頭市と用心棒(1970/日)

率直に言うと、期待はずれ。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







座頭市シリーズという事で、"用心棒"がある程度不利なのは仕方のない事ですが、三船"用心棒"を楽しみに観た私にはなんだか非常に切ない出来でした。黒澤『用心棒』から9年後に作られ、三船敏郎がちょうど50歳の時の作品のようですが、はっきり言って9年後の"用心棒"は"アノ用心棒"="かつての三十郎"じゃない。ていうか、黒澤"用心棒"と同一人物ではない、別の"用心棒"だと思わなきゃやってらんない。妙にセコくて、カネ・カネと煩いし、計算高いし、卑怯だし、女好きだし、おまけに泣き上戸だし!おせっかい焼きでユーモラスで、とってもキュートなかつての用心棒はここにはいませんでした。座頭市を2階から落とそうとし、そんな彼に意地悪をするシーンに至っては、あまりの卑怯っぷりに頭に血がのぼりましたよ私は。あんな悪意のある悪戯、私は許せん。そんな悪戯をする用心棒も許せん。「ドめくら!」「化け物!」や「けだもの!」と吠えるあの言葉には相手を好敵手とする情がこもっていなきゃいけないと思うんですが、あんな悪戯を見せられては、そういう互いの心の繋がりすら希薄に感じられてしまいます。

最強決戦としてはどこまでも魅力的で血が騒ぐような企画だと思います。でも、だからこそ従来のキャラ設定は尊重して欲しかった。フェアじゃなさすぎるよ。…っていうか(かつての)三十郎と思って観た私がいけないのか?実は隠密だったとかあまりと言えばあまりじゃないか。確かに見ごたえはあった。あったとは思うけど、私は・・・やっぱり私は・・・真人間の"用心棒"再来を夢見ていただけに、どうもすんなり入り込む事が出来ないままに終わってしまいました。

それでも今作はシリーズ最大のヒット作らしく、当時もそれだけ話題だったというのがうかがえます。座頭市用心棒も、そして勝新も三船もリアルで見てきた当時の人たちにとって、この企画は本当に夢のようなものだったと思うし、彼らと同じ時代を生きてきた人が心底羨ましいと私なんかは思うのですが、でもやっぱり三船という銀幕スターに恋する一人の女として、こんな"用心棒"は観たくなかったな。喩えが変かも知れませんが、初恋の人に数十年ぶりに会ったらハゲのデブに豹変していて幻滅したみたいな。会わなきゃよかった、ぅぅ…(泣き崩れ)っていう胸中です。三船さんは超かっこよかったんだけどね。

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08.05.29 記

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] Myurakz[*]

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