[コメント] 天と地(1993/米)
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たまたまCATVで放映されていたので、朝方まで見てしまいました。
ベトナムの悲劇を演出する映画もずいぶん作られました。特に1978年に作られた数々の映画が印象的です。『帰郷』、『ディア・ハンター』あたりですね。これらの映画は、アメリカのアカデミー賞で評価されることによって、本当の意味でのベトナム戦争の総括として意味深いものだったと思います。
そして、私にとっては”ベトナム戦争の映画”、というカテゴリーにとらわれず、映画史に残る問題作として『地獄の黙示録』を高く評価しています。この映画はベトナム戦争という狂気を芸術の領域に昇華させたとも言える素晴らしい映画でした。映画の製作過程そのものが狂気だったことで話題も多かった映画ですね。この狂気そのものがこの映画の素晴らしいところです。
この戦争が終わった時期が確か1975年頃ですので、戦争中に作りにくい映画ですね。戦後、ベトナムはたくさんの映画で総括されているような気がします。
オリバー・ストーン監督は、まず『プラトーン』でベトナムを総括しました。同じ隊の中で対立する同士の関係から、見捨てられる兵士の姿ウィレム・デフォーが印象的でした。
しかし、本作『天と地』もそうですが、オリバー・ストーンの戦争映画はやや甘いと思えました。甘い=正常、という図式ですね。本当のベトナムはもっと狂気に満ちていたと思うんですね。
この映画の主人公も確かに辛い辛い思いをしていますが、むしろ本人は生き延びるために対応しているだけで、戦争の狂気そのものはスクリーンに出てきません。むしろこの映画はベトナム戦争を描いた映画というより、ベトナム人の女性を描いた映画なんですね。そのように割り切ればまだ見る価値があるかもしれませんが、それにしては女性の魅力が伝わりにくい。わたくしが男性であるからかもしれませんが、彼女の生き方に惹かれることはありませんでした。
長い長い駄作だと思いました。
ただ、この映画で唯一共感できること。それは宗教に関するベトナムとアメリカの違い。アメリカで暮らす彼女が僧侶を訪ねたとき、そこで「許すこと」を聞きますね。仏教や儒教の世界で伝わる言葉がさりげなく出ていてよかったですね。
あとは没、といったところでしょうか?
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