[コメント] 市民ケーン(1941/米)
お年寄りなどの回想で始まる作品って多いけれど(最近はほんとに多い)、半世紀以上前の作品なのに本作はそれを逆手に取っている。なんたって、立ち入り禁止の看板で始まるんだから、ね。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ケーンは死んだ。
ケーンは回想しない。
ケーンの人生は、そこで、終わったのだ。
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こんな判りやすい結論をこの映画は冒頭の5分で描いている。ここが並み居る回想作品と、大きく一線を画しているところだと思う。
しかし、「ローズ・バド」という意味深な言葉を巡る、我々鑑賞者に向けたもう一つの物語が続く。この物語にはケーン自身による主観的な言葉は出てこない。全ては他人の客観的回想の「継ぎはぎ」である。この「継ぎはぎ」的証言の羅列が、ケーンの波乱万丈の人生をテンポよく綴る上で素晴らしい演出効果を挙げた。
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そしてラスト。
屋敷に置かれた、物、物、物。
黒煙。
立ち入り禁止の看板。
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素晴らしい。本作に限っては、本作の素晴らしさの1/10も言葉に出来ていないであろうことが嬉しい。いろんな意味で奥行きを感じさせてくれる映画は貴重。映像に関するコメントは私ごときが出る幕ではありませんが、もの凄い、ということだけは感じとることが出来たと思う。
よっぽどこの構成で映画を創ることが難しいと言うことなのでしょうが、なかなか類似の作品を思いつきません。そんな中でも本作に一番近い印象のある作品は、黒澤明監督の『蜘蛛の巣城』です。こちらを未見の方は、こちらも是非どうぞ。
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