[コメント] 麗しのサブリナ(1954/米)
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サブリナの父親にしても、「気に食わん」と苦虫を噛み潰しているのは、パリから戻った娘の、洗練されたつもりでお高くとまった態度に違和感を抱いているのかと思いきや、身分違いを気にしているという俗っぽさ。
テニスコートの場面での陰影の美しさなど、詩的な箇所もあるのだが。手の届かない対象の喩えとして月を捉えたショットは良いとして、その「月」であるデイビッドは余りに気さくで馴れ馴れしく、サブリナとは住んでいる世界が違う存在としての説得力に欠ける。そのせいで、サブリナが一流のオンナとして帰ってきても、‘月に手が届いた’というカタルシスのようなものは皆無。
サブリナの純粋さとライナスの策略とが、痛ましく切なく交錯し始めた所から俄然、物語は劇的なものとなっていくが、弟の尻の災難に乗じて策を講ずるボギーの演技が、計算高さの裏の人間性を見せる場面でも終始、鉄面皮なままなので、ライナスの内心の動揺や改心が、単なる脚本通りの段取りに見えてしまう。結果、彼に惹かれるサプリナに芽生えた恋の本物度も希薄に感じられる。
あと、尻にグラスの破片が刺さるというのは、ギャグとして笑うには痛々しすぎるんだな。
この作品とは逆に、オードリー&ワイルダーの作品では、『昼下がりの情事』はとても好きな映画。こちらの方は、惹かれあう男女が互いに欠けた所を補い合う関係になっていた。サブリナとライナスもそうした関係に近づいてはいたのだが、もう一歩、心理的な面で中身を伴ってほしいという所で敢え無く終幕。
台詞でやけに「20世紀だ」と口にするので20世紀フォックスの映画なのかと思いきや、パラマウントですか。
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