コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 野ゆき山ゆき海べゆき(1986/日)

朝、子供たちは魂を抜かれたように、互いに口もきかず整然と学校へ向かう。その異様さは、戦時下の全体主義教育の暗喩だろう。ところが、いったん大人の目を離れたとたん、たとえ大人の力ずくの支配という模倣から始まろうが、子供の思考は本能のままに飛翔する。
ぽんしゅう

そこに戯画化された行動は、子供たちにとっては“無邪気さ”なのだが、裏を返せば大人たちの“力の論理”の馬鹿ばかしさ。だがら、大人の世界の一歩手前にいる少女(鷲尾いさ子)と青年(尾美としのり)の純愛が“無邪気”から本気へと向かうとき、嫉妬と化した大人の本気の“力の論理”が馬鹿ばかしくも二人の行く先に立ちはだかるのだ。

大人へと脱皮せんとする少女(鷲尾いさ子)の幼くも眩い色香を、まさに適齢の鷲尾のそれとして写しと撮ってしまう少女嗜好の妙技は大林宣彦の真骨頂。

余談です。公開以来、何度も観る機会があったのに何故か見逃していた本作を、34年目にして大林監督の没年にようやく鑑賞。作品の内容とも相まって、楽しくも悲しい出会いとなりました。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。