[コメント] 愛を乞うひと(1998/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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力作である。
「愛を乞うひと」というのは、もちろん主人公の照恵だけでなくて、 この映画にでてくる人間像全体を指しているといえるでしょう。 もちろん、母子の間が、もっともクローズアップされている わけですが。
しかし、それ以外の背後の人間関係も無視できない内容が あるように思います。そこにさまざまな愛のかたちを読みとるのが 可能だとおもいます。
時代のながれのとらえかたも秀逸です。流行歌のつかいかたなど、 この作品にすぐれたリアリティをあたえている。
空間・時間的なうごきがこの作品の骨格になっている点は指摘しても いいでしょう。
幼児虐待について・・・この虐待は、なっとくはできませんでした。娘にたいして、愛情あるなしと関係なく、ああいう態度しかとれない母親がいても、おかしくないとはおもう。それを理解したうえで、また母親の心の傷かなにかも示唆されてはいるのですが、わからない。このわからないという気持ちは、そのまま主人公のきもちと重なりあうようです。もしかしたらこの「わからない」という感情にこそ、この作品の核心があるのかもしれません。
家族の絆という心理学的問題、それを下手に解決するのでなく、その問題をそのまま呈示したことに、どうもこの作品の核心があるようです。わからない、という気持ちは、この母子を中心に、さまざまな登場人物の愛情に拡大していくようです。「人間の間」に存在する暗闇こそがこの映画のテーマではないでしょうか?
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