[コメント] 鞍馬天狗(1928/日)
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アラカンこと嵐勘寿郎のはまり役となった鞍馬天狗のシリーズの一本。
たまたまサイレント特集で上映されていたのを知り、一度本物の鞍馬天狗を劇場で観てみよう。とのことで拝見させていただいた。
出来にはかなり満足がいったし、実際これが後に「月光仮面」を経て「仮面ライダー」シリーズへと、脈々と流れるヒーロー像の原型だと思うと、感無量と言った感じ。 ただ、本作を観てちょっとだけ違和感を感じたのが、“正義のあり方”についてだった。
現代は価値観が多様であり、どれが正しくてどれが間違っているのか、曖昧にされる傾向がある(幕末を描いたNHKの大河ドラマでも佐幕派と勤王派のどちら側も主人公になってるし、双方で理解者がいるように描かれる傾向がある)。
それに対し本作の場合、正義とは極めて単純明快に描かれている。
即ち、正義は勤王派にあり、佐幕派の新選組は悪人である。
これが又、見事なレベルで真っ二つに分かれ、正義の人である鞍馬天狗は徹頭徹尾勤王派に味方し、一方の新選組の近藤勇は大声で笑いながらばったばったと志士を叩き斬り、陰謀を張り巡らす(でもこの近藤勇は悪のヒーローとして結構キャラが立ってたりするんだが)。
当時の考え方では正義は明確にする必要があり、現政府を作ったのが勤王派の直系だから、明確に勤王派は正義、佐幕派は悪。という考え方が浸透していたことがよく分かる。
別段これが悪いというつもりはない。ここまで明確に正義の味方と悪の組織の対立構図が出来ていると、これはこれで据わりが良い。まっすぐな正義を信じられた時代だと思えばいい。
そしてここに描かれる鞍馬天狗の姿は、あくまで表舞台には出ず、その正体も知られぬように、時に影に時に堂々と正義のために戦う。まさしく後の特撮ヒーローそのもので、それが又小気味良い。
原作もそうなんだろうが、何より本作の大きな特徴として杉作少年の造形だろう。概ね足手まといではあるのだが、この小さな存在を守る者としての鞍馬天狗の存在感を増しているのであり、後のヒーローの造形の原型でもある。
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