[コメント] 鞍馬天狗(1942/日)
驚いたことに鞍馬天狗は角兵衛獅子の杉作とも初対面という設定で、かなり本作独特の翻案というか、伊藤大輔の創作の世界の上に成り立っている映画だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ファーストカットはクレーンで俯瞰から角兵衛獅子に寄っていく移動カット。カット中、「明治四年」「横濱」と出る。次の町中のカットで英語の看板があったり、大掛かりな西洋人曲馬団(サーカス)の宣伝パレードシーンが続いたりと時代感覚に違和感を覚えるが、「鞍馬天狗は伝説上の人物」と云われている時代のお話なのだ。
全体にシーン間のぶつ切り感が強い、かなり切れている(切られている)のかも知れないと思わせるフィルムだ。ただ、映画の求心力は日本国にとってかけがえのない蒸気船を守ることであり、お国のためには銃後の市民も命を投げ出さなければいけないことを巧妙に洗脳する映画になっていることがはっきりと判る。
と、嫌味な書き方をしたが、実を云うと盲目のヒロイン・琴糸路がいじらしくて私はかなり感動しました。彼女が導火線を追いかけるシーンがクライマックスでしょう。ここは複雑な感動を呼ぶ演出になっている。前半、唐突に琴糸路が針を持つシーンがあり、その異様に美しい、かつサスペンスフルなアップカットが思い起こされるし、何よりも目の手術後、光を見てはいけない、と指示されているという伏線が効いている。また、この嵐寛・天狗と上山草人・ヤコブの対決シーンにクロス・カッティングされる原健作の馬車での銃撃戦はもう西部劇の様相。原健作が連れてくる西郷隆盛の軍隊は西部劇の騎兵隊だ。
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