[コメント] モスラ対ゴジラ(1964/日)
単独でシリーズを持っていた『ゴジラ』に『モスラ』を融合させた作品。どっちかというとゴジラの世界観にモスラを強引に引っ張ってきた感じ。
ストーリーの方は人の欲の浅ましさ、原水爆の恐ろしさ、そして善意ある者の誠意が結局勝つのだ。と言う形に持っていく、まあ言うなればゴジラの黄金パターン。いや、そう言うのは当てはまらないな。むしろこの作品がその形を作ったと言った方が良いだろう。だが、それだけに今になって観直してみたらありきたりな物語に思えてしまう。
物語は兎も角、この作品はゴジラという素材を縦横無尽に使い切った事の方に意味があるだろう。ここでのゴジラは「モスゴジ」などと言われ、「キンゴジ」(『キングコング対ゴジラ』)と並び称される程の傑作造形だった。どことなく愛敬のある顔立ちに、凶悪な眼を付けることで、素晴らしいバランスの表情を見せていた。それとあの尻尾の操演は最早名人芸と言っても良い。本当に良く動く。ゴジラ本人よりも尻尾の演技の方に目が行ってしまう程。ただ、その分モスラの方にやや魅力が感じられなかったかな?都合3匹も出てくるしねえ。
後はインファント島の描写は面白かった。明らかに日本人の顔立ちしているのが暗黒舞踊を踊っているのには笑えるし、ザ・ピーナッツの「モスラ〜ぃやっ、モスラ〜」も良い。あのシーンはゴジラシリーズの中でも名場面の一つだ。
ゴジラ造形が素晴らしいことは言ったが、しかしその素晴らしいバランスを取っていたゴジラが次々と受難に遭う。砂だらけになるわ、変な粉をかぶせられるわ、顔が燃えるわ、モスラの粘糸で絡めとめられるわ、挙げ句に海にたたき落とされるわ…余計なお世話だろうが、中に入ってる人はさぞ大変だっただろう。
物語にもバランスが取れていて、悪くはないのだが、、ラストの宝田明の台詞に急に醒める。「俺たちが良い世界を創ろうじゃないか」。確かに良い台詞には違いないと思う。だけど、あれだけ悲惨なことになってるインファント島にこれだけ迷惑をかけておいて、あそこには何の援助も必要ないんだ。と言う風にも取れてしまい、結局身勝手なだけじゃないか。としか思えなかったのがなんとも。これが無ければ★4なんだけどなあ。
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