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[コメント] 八月の鯨(1987/米)

特に何かが起こるというわけでなく、おばあちゃん達の日常が淡々と描かれていくだけなのだが、そんな中で語られる台詞のひとつひとつが、まさに年輪のように心に刻まれる。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







それをリリアン・ギッシュベティ・デイヴィスが姉妹役で演じるというのだから、若かりし頃の彼女たちの映画をよく観たという方には堪らない映画であったろうことが、彼女たちの映画をさほどたくさん観たわけではない私のような者にも理解できる秀作である。

もちろん彼女たちだけでなく、ヴィンセント・プライスアン・サザーンの意外なほどの適役ぶりも涙ものなのだが、やもすれば硬くなりがちな本作に清涼を運び込んでくれる、やたら大きな音を出す大工役のハリー・ケリーJr.の好演が個人的には大変なツボであった。

また、元々が戯曲であったこの映画の見所が、台詞を中心として語られることも当たり前なのだが、私はそれ以上に、その台詞を生かす舞台設定(あの別荘の佇まい。そこから見える海の風景、波のささやき。カラン、カランという鐘?の音。美しい草木。花々。さりげなく飾られる写真等々)や、老女がまるで少女にかえったかのような可愛らしい衣装の数々にもひどく惹かれるところがあったし、ソフトフォーカスで統一された撮影や音楽も、映画の雰囲気にマッチしていてとても素敵だったと思う。

ラストの手のアップも出来過ぎといえば出来過ぎなのだが、そんなこともまぁ、その手のしわの数に免じてよ…というのが個人的な思いである。

公開時以来の本当に久々の再見だったが、この映画から得る思いが変わらなかったことも本当に嬉しかった。

(評価:★5)

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