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[コメント] 春の戯れ(1949/日)

高峰秀子宇野重吉の悲恋物語。そこに三島雅夫も絡んで、贅沢な芸達者たちの丁丁発止。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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据えたキャメラに長科白、材木置き場での切々たる告白が胸に沁みる。凸ちゃんのラブ・アタック系純愛映画がその後ほとんどない(『浮雲』を除けば、忍ぶ恋や言い寄られての逡巡ばかり)のは、容姿の美しさも含めてこれが極め付きだと、その筋の衆目の一致があったからに違いない。

船乗り志願にはとても見えないのが滑稽にも哀れな、若き宇野重吉も抜群に上手い。この方の表現は、すでにこの頃から演技という言葉を超えている。

本作はトーキー擁護で有名なマルセル・パニョルのマルセイユ三部作「マルセル」「ファニー」「セザール」のうち、前の2作の翻案である(「マルセル」の翻案と云われることが多いのはなぜだろう)。ハッピーエンドを迎える「セザール」が省かれ、人生の荒波のなか翻弄されっぱなしで終えるのが本作の創意である。

わだかまりを抱えた恋が結ばれたとき、わだかまりが突如噴出し、進むも後悔戻るも後悔、科白ひとつで物語が急展開する。誠に人の人生、恋愛にせよ就職にせよ、決めねばならないときは余りにも短く、決められた事柄に従わねばならない時間は余りにも長い。

(評価:★5)

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