[コメント] 男はつらいよ フーテンの寅(1970/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
寅(渥美清)さんにあまりいいところがない。自分が番頭をしている旅館の女将(新珠)に、自分ではひそかに惚れているつもりなのを周囲に悟られ、笑われているという、痛ましい存在と化している。まだ3作目で、キャラクターが確立していない感じだ(その後もブレ続けたとも言えるが)。全作見たあとの平均値(個人的主観)から言うなら、楽天的な破天荒さにも乏しく、可哀相な存在。男がつらいというより、寅がみじめという作品だ。
さくらも、この頃倍賞千恵子が忙しかったとでもいうことなのか、江戸川土手で兄を見送るシーンと、大晦日のとらやを手伝うシーンとの2カ所しか出てこない。いずれのシーンも博(前田吟)と夫婦2人で登場しており、満男がまだ乳呑み子ぐらいじゃなかったかと思うが、どこに預けてたのだろう?
ひろしは、逆に前田吟は暇だったのか、よく絡んだ。それどころか寅と喧嘩までして寅を投げ飛ばしていた(そんなシーンあったんだ)。
寅自身は女将に別れの挨拶を言いにきたつもりなのだが、障子の裏でそれを聞いてたのは実は従業員たちというシーンの演出は痛烈だったと思う。だが全体的には、前2作の山田洋次演出のキレには及ばない凡庸な作品の印象。
旅館で女将が寅に事実を切り出せないからと従業員が手伝うシーケンスを夜と翌朝と2回繰り返すのも退屈だ(そのあと左卜全が寅を「バカはお前だよ」と言うのはパンチあったが)し、年末の「ゆく年くる年」に寅が出てきてお静云々言ってんのもまだ引きずってんのと感じたし。
作品としては、前2作よりマドンナのレベルが格段に向上しており、そんな高嶺の花に寅ごときが恋慕する愚かしさというか格差を描く意図だったのではないか。
70/100(20/4/18テレビ再見、レビュー追記)
♧ ♧ ♧ ♧
寅が2組も結びつけてあげている(春川ますみとその逃げた亭主のカップルと、ノブオ=河原崎健三と香山美子のカップル)という珍しくおめでたい作品。左卜全にも(女将お静=新珠三千代に)フラれたことなんざ5日もすれば忘れるよと言われていた寅が、ゆく年くる年でもお静、お静と連呼してたのはいたたまれない気がしたが、ありゃまだ5日経ってなかったんだろうか。いずれにしても、ここは演出にクドさを感じた。
ラストシーン、寅の啖呵を英語の学習みたいにリピートアフタミーてな感じで律儀に繰り返す船上の鹿児島の庶民たちの素朴さにほのぼのしました。
80/100(21/10/23見)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。