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[コメント] お引越し(1993/日)

未来は僕等の手の中?
Linus

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







父と母は、自分の時間が欲しい。自分が大切という現代病に おかされている。 そして少女は、エゴがぶつかりあう両親の関係がわからない。 それでも少女は、大人にならなければならない。時間は、少女を どんどん大人にしていくのだから。少女は言葉(理屈)を持たない。 だからレンコは大声で叫ぶ。「おめでとうございます!」と。 まるで「おめでとうございます!」という意味のない台詞だけが、 レンコを突き動かしてるようだ。

「おめでとうございます!」。一体、これは何だろう? ラストでレンコは、道で出会う人に「どちらへ行くのですか?」と 聞かれ、きっぱりと「未来へ」と答える。 子供たちには明るい未来がある。(あるべきだ) それは大変目出たいことなんだよと、今にして思うと、相米監督が、 私たちに残してくれたメッセージのような気がしてならない。 本当に明るい未来があるのかは疑わしい世の中。 でも、絶望ばかり強調したって、何の解決にも繋がらないことは、 この10年の閉塞感を見れば明らかなこと。

今や「明るい未来はあるんだよ」という言葉自体が夢物語。 イラクの子供に未来はなさそうだし、銃を乱射するアメリカの ティーン・エイジャーにも未来はなさそうだし、日本の若者にだって……。

だからと言って、虚無感に浸ってる場合でもなさそうだ。 なにしろ、一秒先、一分先、一時間先には、未来が私たちを 無理矢理にでもひっぱって行くのだから。 そうやって、私も子供から大人になってしまったし、 レンコちゃん役の田畑さんだって、あんなに成長しちゃったよ。 とりあえず、相米監督の遺志を継いで、 「おめでとうございます」と呟いてみよう。 そういや『鬼が来た!』でも、香川さんが叫んでいたしね。

言い続けていれば、その内きっと、このループから脱出できる かもしれないし、暗い未来より、やっぱり明るい未来があると思った方が、 楽しく生きられるし、結局、めでてー性格の方が救われる?

(評価:★5)

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