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[コメント] ニュー・シネマ・パラダイス(1988/仏=伊)

幸か不幸か、僕は初見がDVDの完全版だった。劇場で観てみたかった。追加されたエピソードによって焦点がぼやけたようにも思うけど、他にも見所は多々。さすが名作。完全版が「好きか・嫌いか」は別にして、「いいモノはいい」と思える稀有な作品。ただ、ネタバレ覚悟で言うと、人の人生の大きな分岐点における選択肢に積極的に介入してくるお節介キャラはご勘弁だけどねっ!
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







追加されたエレナとの再会シーンの有無は、この映画の肝ともなる重要なエピソードなので、鑑賞した作品が劇場版か完全版かで評価も違うだろうし、温度差も出るだろう。

追加されたエピソード込みで観てしまった僕は、手放しで本作のストーリーが好きだ、とは言えない。だから、薦めてくれた人(劇場版観賞)とは若干異なる感想を抱いてしまうのも仕方のないことだと思う。

そんな中での感想。

アルフレードがなぜ、トトとエレナの再会を邪魔立てするような行動を取ったのか。 親心? トトの映画人としての才能を早くから見出したから? 自分のように代替の利くいち映写技師として片田舎でくすぶった人生を送ってほしくないという友情から?

観賞後、いろんな人のレヴューを読んではみたものの、どれにも賛同することは難しかった。

ただ、人の人生の大きな分岐点における選択肢に積極的に介入してくるお節介なキャラクターってのは、映画の中によく出てくるけど、ホント、勘弁してほしいと思う。

結果どんな道を歩むことになろうと、自分で選択したことなら納得がいく。けど、他人の手によってレールを捻じ曲げられたんじゃ後悔したくてもできやしない。

進路・恋路、何であれ、例え人生の先達たる親・先輩であろうと、ご指導ご鞭撻の域に留めていただきたい。選択は自分でさせてくれ、というのが正直な感想。

いや、映画としてはいいシーン、たくさんあったよ。劇場に入りきらない広場の人に向けて映画のスクリーンを投影して、スピーカーから音までサービスして、してやったりなトトとアルフレードのウインクとか。こんな粋なウインクは、そうそうお目にかかれない。

でも、やっぱり失われたもう1つの人生の可能性、30年の空白は余りに大きい。

初恋の人・エレナに再会して30年振りに昔話をしても、その空白は埋められず。 もちろん、たった1回の秘密の情事を交わしたところで何も変わらず。。。

ただただ、失恋からずっと美化しつづけたイメージを、そこら辺で拾った女と同格にまで貶めてしまった行為のように思えてならない。エレナさえも株を下げたと思う。

トトは多分、その高尚な思い出と引き換えに少なくとも一定の満足は得られただろうね。今後の結婚に向けて気持ちの踏ん切りもついたかもしれないけど。。。

エレナの亭主のボッチャにいたっては悲惨だ。旧友のトトに妻を寝取られたことも知らないんだから。。。

それに対比するかのようなトトの母親のエピソードには身震いした。

若くして戦災未亡人となった母は、その後も亡き亭主と2人の子供だけに愛情を注いで生きてきた。しかも「そういう性分だから後悔はない」とキッパリ言い切る。

現実にこんな女性がいるわけない、とは思いつつも、もし自分の母親がトトの母親のような人だったなら、僕ならそのことだけを誇りにしてでも残りの人生、歩いていける。

そう強く感じた映画でした。

完全版のストーリーは好きじゃない。だけど、映画としては5点。止む無し。

初恋の相手と再会して、昔話や真実を知ったところで、過ぎ去った30年間の空白を埋める術はなく、もちろんたった1回のセックスなんかで片付けてしまうには余りに悲しすぎる。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)りかちゅ[*]

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