[コメント] クロッカーズ(1995/米)
なんだか後々まで余韻の残る、現代風内部告発型ブラック・ムービー。スパイク・リーのイマドキな色を出しつつも堂々としていて詩情も感じさせる拾い物だった。
スパイク・リーはいくつかスカも食らっているので期待しなかったが、その分予想外に感動してしまった。
貧困からはい上がるためにニガーがニガーをクスリ漬けにして借金地獄に追いやるという自己矛盾。黒人社会の中で互いを傷つけ合うという現実はかなりやるせない。救いが無いのだが、それでも僅かながらも愛情を持った人々の存在に心癒される思いだ。
登場人物それぞれの役割が舞台劇のようにハッキリしており、シンボリックな対比の妙がある。役者陣もみなうまい。ハーベイ・カイテルは余裕だとして、家族愛と誠実さ溢れるキャラのアイザイア・ワシントンが泣かせる。葛藤しまくって情けない主人公のあんちゃんも良かった。ジョン・タトゥーロだけあまり見せ場が無くもったいない感じ。デルロイ・リンドーは出色と言いたいが、いままで善人の役が多い印象があり、どうしてもワルに見えない。
それから、相変わらず音楽のセンスだけは良いと思う。サントラ盤もメロディアスなバラッドにヒップホップも加えられて気持ちいい。劇中でヒップホップが流れるとオオッとうれしくなる。今となっては懐かしいスーパーユニット「クルックリン・ドジャース」も聴ける。
それにしても、「自由と平等の国」「サクセス・ストーリーの国」であるはずのアメリカの深刻な閉塞状況に胸が詰まる。日本もかなり近づいている気がする。
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